国内EC市場の現状と今後
国内ECモールの成長が減速
下記は国内ECモール売上トップ3(*「ジェトロ世界貿易投資報告」2017年版)になります。 1. Amazon (20.2%) – モール&小売業 →Amazon自身が商品を仕入れて販売 2. 楽天(20.1%) – モール 3. Yahoo!ショッピング(8.9%) – モール ⇒上位3社の合計で市場シェアの約5割を占めています。 上記調査結果にもあるように、国内ECモールの主力はAmazonと楽天です。 【1.Amazonに関して】 Amazonで新品を販売する場合、Amazon自身が小売業を営んだでいるため価格面でAmazonが競合になります。 更に、Amazonはプライム会員に対しては多くの商品を送料無料にしているため、これに対抗しなくてはならずセラーにとっての粗利確保は簡単ではありません。 【2.楽天に関して】 下記楽天の売上高と営業利益の「前年同期比の伸び率」を見ても分かるように減速傾向にあります。 特に営業利益が落ち込んでいる理由としては減速を補うため、ポイント発行量(=販促費)を増やしてためと思われます。 国内EC市場の競争が激化しモール自体の成長率が減速していく中、その影響はモール自体だけではなく店舗にも及んでいると思われます。 既存店舗からも”売上が以前に比べ上がらなくなってきている”、”広告費の更なる投下やスーパーセール時には売上があがるが乱発するスーパーセールがどこまで今後もユーザーからの支持を維持できるかは不透明”等の声が聞かれます。 (*左図:日本経済新聞 2016/8/5付 朝刊 参照)
国内EC市場自体は8%程の伸びを維持しておりまだ減退期にはないものの、既にモール単位でも店舗単位でも競争が激化し成長や現状維持もがむずかしい状況になってきています。
人口減による国内需要の減少
これに更に拍車をかけるのが、少子高齢化です。 周知のとおり、国内人口は減少の一途をたどりつつあり、ECの主力購買層となる「15歳から64歳の人口」は15年後の2028年には7000万人を下回るとされます。その結果、国内の消費財需要は確実に影響を受け、2050年には2000年対比で約3割の縮小が予想されています。 →赤線の消費者世代が左肩下がりになっていくのが顕著に見てとれます。 (第1回 産業構造審議会 流通部会 審議用参考資料 参照)
これら店舗数の飽和状況による競争激化と国内の人口減少の様相を呈する中で、各企業とも今後の市場を成長する新興市場に求める必要性が生じており海外販売への需要が高まってきています。
越境EC市場の現状と今後
海外ECや越境ECのマーケットが伸びている
中国とアメリカを中心に越境ECの世界の市場規模は2020年まで毎年、対前年20%以上で成長すると予測されております。この背景には、PCとスマートフォンが世界中で普及したことにより、海外の商品であっても誰でも、手軽に購入できるインターネット環境が整ってきたことがあります。
(*経済産業省「平成28年度 我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備(電子商取引に関する市場調査)」2017年4月発表) その中でも、「日本から米国への越境EC販売市場規模予測」が以下になります。
(*経済産業省「平成28年度 我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備(電子商取引に関する市場調査)越境 EC 市場規模」2017年4月発表 ) 国内EC市場の現状と今後に比べ、越境EC全体をみても、日本の最大貿易相手国の対米越境EC予測をみても、今後堅調な成長が見込めることが分かります。これも海外販売の需要が高くなる要因となっています。
越境EC向け各種ツールの充実
越境ECを行うための各ツールの開発により、以前より手軽かつ確実に海外販売ができる環境が整いつつあります。 1. 国際間取引にも安心なオンライン決済ツール”PayPal”の登場 ⇒取扱高30兆円・アカウント数:世界1.97億人・190ヵ国・21通貨に対応しており国際間取引のリスクを解消してくれます。
2. 国内モールだけでなく”Amazon”や”eBay”等、海外モールとの在庫連動も可能なツールの登場 ⇒ほぼリアルタイムでの在庫連動が可能になりました。
3. 配送ラベルツールの充実 ⇒配送ラベルを印刷して貼り、発送済ボタンを押すだけで各モールに追跡番号がアップされるようになりました。
4. 出品ツールの充実 ⇒大量出品・自社サイトや他ECモールの商品データ活用・商品テンプレート反映が効率的に行えるようになりました。 国内EC市場の成長鈍化・国内人口の減少・越境EC市場の拡大・越境EC向けツールの充実により環境が整ってきていること等をふまえ、海外販売を始める企業が増えてきています。